今年の全国学力テスト
今年も全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)が実施され、その結果が公表されました。全国学力テストは文部科学省が毎年、小学6年生と中学3年生を対象に行っていて、今年は4月18日に行われました。実施教科は、小学校が国語と算数、中学校が国語と数学で、中学校の英語は今回は実施されていません。参加校は、国公私立の小学校1万8,728校、中学校9,686校、計2万8,414校。国公立はほぼ全校が参加、私立の参加率は37.8%でした。参加者は小学6年生が約102万3,000人、中学3年生が約99万8,000人にのぼります。調査結果によると、教科に関する調査の全国の平均正答率は、小学校の国語が67.8%(前年度67.4%)、算数が63.6%(前年度62.7%)、中学校の国語が58.4%(前年度70.1%)、数学が53.0%(前年度51.4%)となっており、中学校の国語が前年度から11.7ポイント下がって、2019年度に現在の出題形式に切り替わって以降、過去最低となりました。
思考力や表現力などが必要な問題
分野別に正答率を調べると、思考力や表現力などが必要な問題は、基礎的な知識が求められる問題と比べて平均正答率はいずれも低く、特に算数と数学で大幅に下回っていました。(算数は21.3ポイント差、数学は33.5ポイント差)。例えば中学校の数学では、ストーブの「強」と「弱」で灯油を使い切る時間にどれほど差があるか、使用時間と灯油の残量を示した数式とグラフから求め方を考えさせ、それを記述式で説明する力が問われましたが、各問題の正答率は8%や9%で課題が見られました。指導要領では小中学校いずれも「データの活用」が新たな領域として盛り込まれていますが、その成果はまだ十分に発揮されていないようです。
中学の国語でも、全15問のうち3問あった記述式の問題は全て正答率が40%台にとどまり、全体の正答率は前回(70.1%)から10ポイント以上低下しました。
文部科学省は「思考力を要する問題と、記述式の問題に課題が見られる。ただ、昨年より改善された点として、無解答率が以前より下がっていることが挙げられる。深い学びを届ける授業改善が進めば正答率の向上にもつながっていくのではないか。小中学校を通して児童や生徒が自分の考えを説明しあう授業を行うなど、思考力・判断力・表現力を育てていく必要がある」と話していました。
学力テストをめぐっては、試験内容や正答率などの他に、小6と中3で計10万人程度いる不登校の子がほとんど参加していない点が問題点として指摘されています。こうした点への配慮もあり、文部科学省は2027年度から紙での試験を廃止し、1人1台配備された端末を使って全校でオンラインで回答する方式にする方針を示しています。
勉強時間の減少
テストとあわせて実施されている生活習慣や学習環境などに関する調査では、勉強時間が減少する傾向が続いていることが分かりました。学校の授業以外の勉強時間は、平日では「30分未満」もしくは「全くしない」という回答が小学校で18%と5年前の調査から増え続け、中学校では17%と3年連続で増加しています。休日も「1時間未満」もしくは「全くしない」という回答が、小学校で51%、中学校で36%と、ここ数年増加しており、勉強時間が減少する傾向が続いています。
一方、ゲームをする時間が1日あたり「3時間以上」もしくは「4時間以上」という回答は、小学生で30%、中学生で29%という結果でした。SNSや動画を視聴する時間が一日当たり「3時間以上」もしくは「4時間以上」という回答は、小学生では21%と前回より1ポイント増え、中学生では32%と前回より3ポイント増えました。
当然のことながら、学校以外での勉強時間が少ない人、ゲームやSNSをする時間が長い人ほど、学力テストの平均正答率が低い傾向にありました。文部科学省は、「勉強時間の減少が学力の低下にどの程度つながっているか、今後さらに詳しい分析をする必要がある」としています。